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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―水際対策から感染蔓延期に向けて―(2020.2.21現在)

一般社団法人日本感染症学会及び、一般社団法人日本環境感染学会から『新型コロナウイルス感染症(COVID-19) ―水際対策から感染蔓延期に向けて― 』という文書が出されましたので一般市民の方に関する部分を紹介致します。 

昨年の 12 月から中国武漢市を中心に広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて医療機関、学会、行政が連携して対策を講じている状況です。指定感染症としての認定、武漢市からの邦人の移送、施設およびクルーズ船における経過観察措置など、水際対策の実施は国内の感染者数の急激な増加に一定の抑制効果を示してきました。しかし残念ながら、2月15日以降、日本各地で感染経路が特定できない感染事例が報告され始めたのはご承知の通りです。このような状況の中で、地域の状況を見ながら、地域単位で感染対策のフェーズを水際対策期から感染蔓延期へ移行させていくことが必要になってきます。2月20日時点で死亡例が3例報告されており、また高齢者・基礎疾患のある患者において重症例が報告され始めています。本ウイルス感染症の特徴として、その感染性とともに肺炎を合併する頻度の高さが明らかになってきました。致死率は依然としてSARSより低いものの、高齢者・基礎疾患保有者における肺炎の合併は生命を脅かす重篤な状態につながる可能性を高めます。このような感染症の蔓延期においては、重症例に焦点をあてた医療の実施が重要な戦略となってきます。感染蔓延期においては、感染経路が追えないことから中国からの訪日客との接触のない症例も対象になります。ただし、訪日客との濃厚接触歴の有無は、現時点では地域によっては発生早期段階であると考えられるため、本症を疑う上では依然として重要になります。このような状況の中で、2月17日に厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」が発表されました。 

新型コロナウイルス感染症が地域によっては感染蔓延期を迎える中で、医療関係者はもとより、一般市民の方々におかれましても、その対応と行動を変えていく必要があります。以下にそのポイントを解説させていただきます。 

一般市民の方々へ ―共有してほしい情報と行動― 

1. 感染症の臨床的特徴が明らかになってきました。 

本ウイルスに感染を受けた人の多くは無症状のまま経過するものと思われます。感染を受けた人の中で潜伏期間(1〜12.5日)ののち一定の割合で発熱・呼吸器症状(咽頭痛、咳)などの感染症状が認められるようになります。発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多いことが特徴とされています。いわゆる風邪、あるいはインフルエンザであれば、通常は3〜4日までが症状のピークで、その後改善傾向がみられますが、新型コロナウイルス感染症では症状が長引くことが特徴です。4日を過ぎても発熱が続く、特に1週間目においても発熱が続く場合、息が苦しい、呼吸器症状が悪化する、などを認めた場合には肺炎の合併が疑われます。すぐに帰国者・接触者相談

センターにご相談ください。 

2.1週間以内に症状が軽快しそうであれば、自宅での安静で様子をみます。 

新しく出現した感染症の場合には、しばしば重症例だけが取り出されて解析されることになります。しかし実際には、感染をうけても無症状~軽症の人が何倍も多く存在すると考えられています。新型コロナウイルス感染症においても同様のことが考えられます。おそらく風邪様症状から軽い上気道炎ぐらいの軽症例が多数存在するものと思われます。このような症例は1週間で症状が軽快します。特に治療の必要はなく、自宅で安静にしておくことで十分です。ただし、家族など身近の方への感染に気を付け、家族と接するときのマスク着用と、こまめな手洗いや手指消毒を心がけましょう。 

3.1週間以上熱が続く、呼吸苦・呼吸器症状の悪化がみられる場合には医療機関へ 

一方で、4日〜1週間ほど経過しても熱が続いている、呼吸が苦しくなってきた、咳・咽頭痛が悪化している、などが見られた場合には帰国者・接触者相談センターに相談する必要があります。1週間未満であっても高熱がみられるようになった、呼吸困難がみられるといった場合には肺炎の合併を疑います。速やかに帰国者・接触者相談センターに相談して帰国者接触者外来のある医療機関を受診してください。また、その際マスクを着用するなど周りへの感染に気を付けてください。 

4.高齢者・基礎疾患を有する人は外出を控える、人込みの中に入らない。 

新型コロナウイルス感染症は高齢者や基礎疾患がある人で重症化しやすいことが明らかとなっています。幸いにも、小児においては重症例が少ないことが報告されています。重症化につがなる基礎疾患としては糖尿病、心不全、腎障害・透析患者や、生物学的製剤、抗がん剤、免疫抑制剤投与患者などがあります。また妊婦においても上記患者と同様に本ウイルス感染症にかからないような対応が必要になります。人が多く集まる場所では、本ウイルスを持っている人と遭遇する機会が高まります。今回問題となったクルーズ船や老人介護施設・病院などは高齢者や免疫不全患者が多数集まる場所です。新型コロナウイルスの持ち込みには十分注意しなければなりません。 

5.現在、実施されているウイルス検出のための検査(PCR法)には限界があります。 

新型コロナウイルスは、主に咽頭や肺で増殖しますが、インフルエンザに比べてウイルス量は少ないと考えられています。PCR法という核酸検査で増幅してウイルスを検出する方法が診断に応用されています。最初の検査で陰性で、2回目の検査で陽性となった症例も報じられました。インフルエンザに比べて1/100~1/1,000といわれるウイルスの少なさは、検査結果の判定を難しくしています。とくに早い段階でのPCR検査は「決して万能ではない」ことをご理解ください。 

一般市民の皆様へ ―クイック・チェックポイントー 

1.注意すべき事項 

 自分自身の健康管理を行ってください。体調が優れないときは朝・夕の体温測定を行いましょう。 

 病院や施設での面会を控えましょう。高齢者や基礎疾患のある人に感染症をうつさないようにするためです。 

 人が多く集まる室内での集会等の参加は必要なものに限りましょう。 

 公共交通機関において、つり革、手すりなどの他人が触れる場所に触れた後は、鼻、口、目などを触らないようにしましょう。不特定多数の方の触れるものに接触した後の手指衛生が重要になります。 

 会社、学校、自宅に着いてから手洗いをしっかり行いましょう。 

 時差通勤によりラッシュアワーを避けましょう。 

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて準備してきたテレワークによる自宅勤務も活用しましょう 

 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感がある場合には、出来るだけ会社、学校は休み、自宅での安静・静養を行いましょう。 

 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感がある場合に、人と接触する場合は、咳エチケット(マスク着用)を行い、手で鼻、口を触った場合は、手洗いを行いましょう。 

 体調不良者(発熱、咳など)に接する場合には、マスクを着用しましょう。 

2.注意すべき症状 

 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などに加え、呼吸苦、息切れの症状がある場合 

 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などの症状が、5日以上持続する場合 

3.受診行動 

37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などに加え、呼吸苦、息切れの症状がある場合や37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などの症状が、1週間以上持続する場合は、帰国者・接触者相談センターなどに相談してから病院(一般外来で受診せず、帰国者接触者外来)を受診しましょう。この時、マスクを着用し公共交通機関の利用は避けましょう。 

4.高齢者または基礎疾患のある方 

 毎日、朝・夕、体温測定を行いましょう。 

 多くの方が集まる集会場等へ行くことは控えましょう。 

 インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンを接種されてない方は医療機関で接種を受けましょう