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会員コラム:町内における百日咳の流行を経験して 都農町国民健康保険病院 小児科 坂元 幸子

宮崎県内において、百日咳の散発的な流行が続いているという。

従来の抗体測定法では迅速な診断が困難だった症例でも、LAMP法が保険収載されたため、診断が比較的容易になった。そのため、今まで見逃されてきた流行が容易に捉えやすくなった。しかし、治療や対策は従来と変わっていないため、収束までに時間を要していると思われる。

平成30年3月(第10週)から都農町内で、小・中学生を中心に流行がみられ、収束までに4ヶ月を要した。当院に初発例から4ヶ月間に54例のLAMP法陽性者が受診した。偽陰性例の可能性が高い臨床的診断例も含めると70名近くの患者が受診した。

百日咳は学校保健法により出席停止が必要な疾患である。なのになぜ、今回これほど流行したのか?いくつか考えられたので、反省とともに、私たちがとった対策について述べたいと思う。

(1)百日咳は、発熱もなく年長児では全身状態もそれほど悪化しない。そのため、外来受診し結果が出るまでの2〜3日登園、登校してしまうのである。検査時に、「百日咳だったら咳で人に移るので、咳が激しい間は登校しないように」「結果が出るまでは、百日咳かもしれないと思って集団の中は避けるように」といくら言っても、登校させる保護者もいる。そのため、4ヶ月目から、百日咳が疑われ検査をおこなった場合は、結果が出るまで暫定的に出席停止扱いにしていただいた。当初は消極的だった学校側も、あまり長期化するため、校長権限で踏み切ってくださった。それから、まもなく新規患者はでなくなった。

(2)当初から、検査を行った時点で。鎮咳剤とともにマクロライド系抗菌薬を処方して、排菌をできるだけ少なくするようにはしていた。しかしながら、その中で、他院(内科など)でマクロライド系抗菌薬内服4日目の児童からもLAMP法で検出された。そのため、除菌には5日間では不十分と考え、最低1週間の内服を処方し、1週間は休むようにとの指導に切り替えた。

流行4ヶ月目で、町内の学校関係者、福祉・保健の関係者による、緊急対策会議が開かれた。その頃には、流行はだいぶ治まってきていたが、その場で改めて以上の対策を説明し、予防接種の勧奨も行った。

今後もし百日咳が流行した場合、上記の対策を早めに取ることで早期収束を図れるのではないかと考えている。