会員コラム:『川崎病』について 県立宮崎病院 小児科 中谷 圭吾
今回のコラムは、私が診療のライフワークとしている『川崎病』という疾患についてお伝えしたいと思います。
今ではこの病気をご存知の方も多いでしょうが、川崎富作先生が発見し、1964年(前回の東京オリンピックの年!)に報告されました。全身の血管に炎症が起こっていることは解っていますが、かれこれ50年以上経った現在でもその原因が不明です。
そのため、未だに以下の6つの主要症状と検査所見などを参考にして診断せざるを得ません。
1)5日以上の発熱
2)眼球結膜の充血(白目が赤くなる)
3)口唇口腔所見(唇が赤く腫れたり荒れて切れる、イチゴのような舌、のどが赤い)
4)発疹(決まった形や場所はない。時間とともに変化する)
5)四肢末端の変化(手のひらや足のうらが赤くなったりむくむ。回復期に爪の先端から膜のように皮がむける)
6)頸部リンパ節腫脹(首のリンパ腺が腫れて痛がる)
(※BCG接種痕の発赤も有名ですが、3歳以上ではあまり見られなくなります)
上記の症状が5つ以上見られれば診断は難しくありませんが、2割くらいの患者さんは、5つ揃わない“不全型”といわれるタイプなので、診断に苦労することもあります。
川崎病では、心臓に血流を与える冠動脈(かんどうみゃく)という血管に強い炎症が起こり、その結果一部が膨らんでしまうことがあります。これを冠動脈瘤(りゅう)と言いますが、無治療の場合は2−3割の患者さんで後遺症として残ってしまいます。
膨らんだ血管の中を流れる血液はよどみ、血栓という血の塊ができやすくなります。そのため、血栓ができないようにする薬を飲み続けなければならず、出血を止める力が弱まるので、運動などにも制限が必要になることもあります。
したがって、炎症を抑えることで冠動脈瘤を作らないようにするのが治療の目標になります。現在まず行われるのは、免疫グロブリン製剤という薬を大量に点滴投与する治療ですが、冠動脈が膨らみ始める発熱10日目より前に炎症を抑え込むためには、できれば5日目から、遅くても7日目には最初の治療を開始したいと考えています。
当然ながら、川崎病以外でも発熱が5日以上続く疾患は多数ありますが、上記の主要症状のうち発熱以外に1つでもある場合は、かかりつけの小児科でまず診察や血液検査を受けていただくことをお勧めします。