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会員コラム:こどもの事故『溺水』 宮崎県立宮崎病院小児科 大平 智子

宮崎県立宮崎病院小児科 大平智子と申します。昨年4月に10年ぶりに故郷宮崎に帰って参りました。この1年、子供3人抱えながらの日常は目まぐるしく、いつの間にか経っていたという感じです。

さて、今回のテーマはこどもの事故です。もうすぐ炎暑の季節がやってきて、水遊びなどの機会が増えますので、「溺水」をテーマに書かせていただきます。

★人が溺れるとき実は静かです。

「溺れる」というと、もがいてバチャバチャと水しぶきが飛ぶような激しい動きを想像しがちですが、実際は声も出ず、手足もうまく動かせず、傍から見ると非常に静かなのです。すぐそばで人が溺れていても気付かないことさえあります。

★溺水事故は家庭の中で起こることが多いです。

0~5歳の子供の「溺水」事故の多くは家庭の中で起きています。ビニールプールや浴室で水遊びをするときに、「少しくらい1人にしても大丈夫だろう」と思ったことはありませんか。大人がちょっと目を離した隙に、悲しい事故は起きています。

★浮き輪を使っているからといって安心してはいけません。

安全のために考案された商品が、実は溺水の致命的な要因になっていることもあります。その一例が浴槽用浮き輪です。浴槽用浮き輪とは、浮き輪の真ん中にパンツ型シートがついており、そこに足を通して座った状態で浮くことができる浮き輪です。浴槽用浮き輪は物自体の使用が危険ですので、使用自体を避けてほしいです。首浮き輪も同様です。浮き輪をしていてもバランスを崩すと溺れることがあります。目を離さないでください。

★水遊びをする環境では、目を離してはいけません。

日常生活では常に目を離さない、というのは無理ですので「目を離しても良い環境つくり」が大切です。しかし『水遊びをする環境は、すでに目を離してはいけない環境』となっています。乳幼児は、深さ10cm程度の水でも溺れてしまいます。決して目を離してはいけません。

★浴槽に水がたまっている時には浴室に鍵をかけましょう。

残り湯をなくすのが一番良いですが、どうしても浴槽に水をためたままにしておくときには、浴室の外から子供の手が届かないところに鍵をかけて浴室に入ることができないようにしましょう。

AHA(american heart associate)が推奨する小児の救命連鎖で一番重要なのは『予防』です。それに勝る救命方法はありません。

日常生活で自分自身ヒヤリとすることも多く、診療で事故の患者様を目にすると、明日は我が身だと感じております。1日1日やっと生活している私ですが、これからも子供が安心して暮らせるように努めてまいりたいと思います。