会員コラム:こどもと絵本 せんなり小児科 先成 英一
宮崎市でのブックスタート事業の取り組みは、2003年6月に始まりました。最初は1歳6か月の集団健診の場で行われていましたが、赤ちゃんと絵本との出会いはもう少し早い方がよいのではということで、翌年の2004年4月より、7~8か月乳児健診(個別)の場に移され現在に至っています。この7~8か月健診の場への導入は、さとう小児科佐藤潤一郎先生のお父さんである佐藤雄一先生が宮崎市郡小児科医会会長就任時代になされたと記憶しております。
ところで、われわれ日本人はどうしてテレビ・ビデオ・テレビゲーム等メディアに接触する時間が多いのでしょうか? 2004年2月に日本小児科医会が、同年4月には日本小児科学会が「子どもとメディア」の問題に対する提言を出し、乳幼児のテレビ・ビデオの長時間視聴の危険性を指摘し、小さな赤ちゃんの時期からメディア漬けの習慣を回避するように呼びかけています。乳幼児期早期より、残虐な映像に接することは、それが当たり前のように感じられ、将来の犯罪増加に繋がる可能性をはらんでいるのです。さらに、日常茶飯事に娯楽番組ばかりを無意識に見ている時やテレビゲームに熱中している時には、人間の大脳で思考力・想像力・創造力をつかさどる前頭前野が全然活性化されていないのです。これでは、あなたの可愛い大切な赤ちゃんの未来は台無しです。
メディアと接触する時間を減らし、あなたの大切な赤ちゃんと過ごす時間を作ってみませんか? 赤ちゃんと一緒に絵本を開く体験が、親と子供が同じ楽しい心のふれあう時間を共有することにより、親と子供の間に大切な絆を作ってくれるのです。絵本を読んであげた時の、親をみつめる赤ちゃんのあの笑顔はなんと素晴しいことでしょう!
赤ちゃんの生活に密着した身の回りのもの、食べ物・乗り物・動物・おふろやうんち等の絵本は、日常生活の習慣や躾を自然に教えてくれます。また「だいすきなグー」や「いのちのまつり“ヌチヌグスージ”」等は、私が大好きな絵本のひとつです。「だいすきなグー」では、可愛い犬グーの死から、子供ながらに「生と死」の概念や命の尊さの素晴らしい体験を得ることが出来ます。「いのちのまつり」では、沖縄地方のお墓まいりを通して、御先祖様を大切にする心や、自分自身が奇跡の存在であること、生きるってこんなにスゴイことなんだ、人類の平和、命の大切さを学ぶことが出来ます。
絵本は、子供だけが楽しむものでもありません。大人も十分に楽しみかつ教えられることも多いのです。絵本がすべてではありませんが、絵本を一つの媒体として、感情豊かな人間形成に繋がり、素晴らしい世の中になっていければ最高だと思います。