会員コラム:子どもとメディア どんぐりこども診療所 糸数 智美
今年3月1日に、市民団体「子どもとメディア みやざき」が発足し、その代表を務めることになりました。
この団体は、「著しく発達した電子メディア(以後メディア)社会において、子どもとメディアの問題をしっかりと考え、子どもを取り巻く様々な職種の大人たちが、子どもたちのすこやかな育ちを見守るための啓発活動を行っていこう」と設立されたものです。
メディアの発達は、この世の中をとても便利で快適なものに変えました。しかし、それと同時に私たちが人として忘れてはいけないもの、大切なものを奪ってしまっていることにも気づかなければなりません。今や、周りを見渡せばだれもがスマホを持ち、下を向いています。病院の待合室では、親はスマホから目を離さず、子どもから目を離す。転落、転倒は日常茶飯事です。ファミレスでは、食事の注文が終わると、子どもはDS、タブレットでゲーム、親はスマホにくぎ付けで全く会話のない家族。戸外では、歩きスマホの母親の後をトボトボとついていく子どもの姿や、公園では集団でDSに盛り上がる子どもたち。赤ちゃんがぐずれば、スマホの子守りのアプリをかざす母親などなど、胸が痛くなる場面ばかりです。スマホがなかった時代、待合室では、母親は子どもを膝に乗せ絵本を読んでいたでしょうし、ファミレスでは、注文した食事が来るまでの間、親子の楽しい語らいがあったでしょう。お母さんに手を引かれ、優しい母のまなざしと温もりを感じていたはずの子どもと、公園を駆けまわっていたはずの子どもたち。ぐずる赤ちゃんを、若いお母さんは、何とか泣き止まそうと、抱っこしてあやしたでしょうに…。最近、子どもの発達への関心が高まっていますが、その前にまずは子どもの心の育ちに大切な「愛着」と呼ばれる心の絆を、改めて考えてみることが必要なのではと、強く思います。子どもの心の発達には、「応答のある関わり」がとても大切です。それが人と人との直接的なやりとりです。それが、頭と体を精いっぱい使う、子どもの命「遊び」です。メディアは残念ながら一方通行の関わりしかできません。子どもの体への影響も心配です。視力や立体視機能低下、筋力低下を招き、子どものロコモが増加していることも問題視されています。
もちろん私たちは、メディアを否定するだけでなく、ではどうしたらいいのかということも同時に考えて行かなければならないと思っています。若い母親たちが仕方なく頼ってしまう子育ての現状も十分理解した上で、昔の知恵と経験から「こうしてみたら?」「こんな遊びがあるよ」と「一緒に遊ぶ楽しさ、大切さ」を伝えていくことも必要です。核家族化と、共働きの多い中、何が問題で何ができるのか、保育・教育・医療・行政などすべての子どもを取り巻く大人たちが、一緒に考え共に知恵を出し合って、みやざきの子どもたちのイキイキとした笑顔を守って行かなければと思います。
問題は深刻ですが、自然豊かなここ宮崎なら、「よく遊び、よく食べ、よく寝る」元気な親子をもっともっと増やす事だって決して夢ではありません。