会員コラム:海の生き物に刺されたら 山見医院 山見 信夫
子どもたちが海に出かける季節になりました。海で何かに刺されたときどうされていますか? すぐに手で触れたり、水で洗うと悪化することがあるので、応急手当について書いてみたいと思います。
クラゲやイソギンチャクなどの刺胞動物に刺されたときは、刺された箇所を慌てて海面から上げないこと、すぐに直接触れないことが大事です。刺された箇所を海面から上げてしまうと、触手が皮膚に貼り付いてしまいます(触手には刺胞と呼ばれる袋がたくさんついていて、中には刺激によって飛び出す毒針とそれに繋がる刺糸が仕舞われている)。また直接触ってしまうと、さらに刺糸が発射されひどくなることがあります。まずは、水中で刺された箇所に海水を扇いでかけるなどして、付着しているかもしれない生物の一部を洗い流すことが大切です。何に刺されたかわからなくても(生物の姿が確認できなくても)、海水をかけて悪化する刺毒はないので心配する必要はありません(群れているときは注意が必要)。
ひどくなりがちなアンドンクラゲやハブクラゲなどの箱形をしたクラゲに刺されたときは、水中でできる限り触手を乗り除いたあと、食酢(酢酸濃度5%)をたくさんかけると痛みや皮疹が悪化せずにすみます(ただしカツオノエボシにかけるとひどくなるので注意)。クラゲの組織が固まり、刺糸が発射されなくなり、触手もはがれやすくなります。手で触れたり温めたり水道水をかけると(刺激を加えると)刺糸が発射され悪化する傾向があります。
魚類(アイゴ、エイ、ゴンズイ、オニオコゼ、ミノカサゴ)や棘皮動物(ガンカゼ、ウニ、ヒトデ)に刺されたときは、すぐに海から出て、熱めのお湯に浸します(42~45℃に30~60分)。これらの毒はタンパク毒なので、熱めのお湯によって活性が失われ症状が和らぎます。ただし手当て中にアナフィラキシー症状(アレルギーのひどい症状)が見られたときは温めることを止め、すぐにエピペン(アドレナリン)注射などの救急処置を行わなくてはいけません。お湯に浸けると刺された箇所の血管が広がり、毒が全身に回る可能性があることは常に念頭に置いておかなければいけません。刺毒によるアナフィラキシー症状は数分以内に現れることが多く、発症までの時間が短ければ短いほど重篤になる可能性があります。アナフィラキシーを起こす可能性が高い方は、刺された箇所より心臓に近い部位をタオルで軽く縛り、ポイズンリムーバー(毒を吸引する注射器型をした器具。インターネット通販でも買うことができる)などで吸引して排出を試みることもあります。
いずれの生き物もこれらの手当てが終われば炎症を抑えるために冷やしても構いません。症状が残るようであれば、副腎皮質ホルモンの塗り薬や抗アレルギー薬を服用します。