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会員コラム:愛しのドーナツ 宮崎県小児科医会 幹事(沖内科・小児科医院)沖美和

 1980年代初め、高1の部活帰りに宮交シティのミスドでドーナツを食べるのが楽しみだった。お気に入りは穴の無い丸いドーナツの上にクリームとジャムの乗ったアメリカンフルーツ。当時は珍しかったラズベリーやアメリカンチェリーのジャムは強烈に甘く、心もお腹もがっつり満たしてくれた。消費税なし1個100円。高校生のお財布にも優しかった。30分自転車を漕いで帰宅後すぐに夕食をしっかり食べていたが、どんなに食べても太らずガリガリに瘦せていた。
1980年代半ば、大学生になりお酒を嗜むようになると、甘いドーナツと距離ができた。南宮崎駅近くにマックができ、ハッピーセットにはまった。ミスドと言えば一番街の待ち合わせと飲んだ帰りのお土産だった。
 結婚・出産を経て家族4人で2000年に小林へ移り住んだ。ミスドは居なかった。福岡へ家族旅行の時に、大濠公園近くのミスドでモーニングを食べるのは一大イベントになった。宮崎ではショーケースの中にドーナツが並び、店員さんに取ってもらうスタイルだった。福岡では自分で並んでいるドーナツをトングで取るスタイルで、ついつい取り過ぎいつもお腹パンパンになっていた。
 暫くして小林にもついにミスドがやって来た。スーパーの一角の小さなスペースだった。堪能する間もなく、ミスドはすぐにいなくなってしまった。
 年を重ね代謝が落ちてくると、ドーナツを好きに食べている場合ではなくなった。食べたら食べただけ体重が、脂肪が増えていく。ドーナツはご飯代わりになり、ご褒美になった。今の私の一押しドーナツは、小林駅前の洋菓子店スイーツやの1個250円の生ドーナツだ。昼頃に出来上がるその出来立ては五感を震わす一品だ。白い薄紙に包まれたドーナツは甘い香りの中にしっかりと油を感じる。ドーナツ全部がクリームかと思える位、大量のクリームがあふれんばかりに生地の中に入っている。はむっと歯を入れると、生地はもちっとした弾力があり、控えめな甘さのクリームが口の中をいっぱいにする。ご褒美はあっという間に私の胃袋に納まってしまう。美味しいと評判のお洒落で高価なドーナツも食べてみた。でもやっぱり私にはスイーツやのできたてドーナツが一番だ。売り切れも多く、口にできない日が多いからか、私の心を生ドーナツが占めていく。好きなものも美味しいものも自由に食べたくて、犬の散歩やテニス、夜のストレッチと体重管理に勤しむ毎日である。