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会員コラム:K.550の話 宮崎県小児科医会 幹事(延岡共立病院)日髙文郎

私はクラシック音楽(以下クラシック)愛好家である。クラシックというと、知的、上品、癒されるなどのイメージがある一方、敷居が高い、退屈、眠くなるなどの印象を持つ人がいるであろう。そのためか私の周りにはクラシック好きが少ないように思う(単に友達が少ないだけという可能性があるが)。そこでこのクラシックのすばらしさを伝えるべく、私のような愛好家がどのように魅了されているのかを詳説したい。なお、私自身は音楽の専門家ではないため多少誤った表現が出てくるかもしれないが、素人の戯言と思っていただき何卒ご容赦願いたい。

ところで、みなさんにもジャンルを問わず好きな曲があると思う。その理由は様々であろうが、曲の歌詞や旋律に共感を覚えたからというものが多いのではないか。クラシックについてもまず聴いてみて自分の感情に任せるのがよい。個人の感想に正解は存在しないと思うので、好意的であれ否定的であれ感想を抱くことが重要である。
それを踏まえて私のお気に入りのヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(以下モーツァルト)作曲、交響曲第40番K.550を解説したい。この交響曲の特徴の一つは短調で書かれていることだ。短調ゆえに独特の哀愁漂うなか展開されていく構成は絶品である。以下、楽章ごとに要点を簡潔に述べる。
第一楽章、モルト・アレグロ、ト短調、2分の2拍子、ソナタ形式
冒頭ヴィオラが刻んでからヴァイオリンによる主題が現れる。この主題が楽器を変え音程を変え、同じリズムで繰り返し出現するところが印象深い。
第二楽章、アンダンテ、変ホ長調、8分の6拍子、ソナタ形式
変ホ長調となりテンポは緩徐で眠気を誘う。しかし聴きながら思わず呼吸を合わせたくなる主題で、時々ため息が出そうになるくらい美しい。
第三楽章、メヌエット:アレグレット、ト短調、4分の3拍子、三部形式 哀愁というより力強さ、勇ましさを感じるメヌエットである。トリオで管楽器が奏でる雲の切れ目から太陽の光が差し込むようなメロディが心地よい。
第四楽章、フィナーレ、アレグロ・アッサイ、ト短調、2分の2拍子、ソナタ形式
フィナーレのテンポは速く緊張感がある。主題が波のように次から次へと押し寄せてくるところから、心のうちに秘めた何かしらの感情が湧き出すように感じる。

なぜ私はモーツァルトを好むのか、その理由をあまり考えたことがない。改めて考えてみると、彼の作品には透明感のある曲が多いため、私は違和感なく受け入れてしまう。聴いているうちに気が付くと心が同調する不思議な気分になる。主題となるメロディ、音の強弱、リズムなどに自分の感情を合わせ心酔することに多大な楽しさを感じているのであろう。

以上、前述したクラシックのすばらしさを伝えるという目的すら忘れてしまうほど、思うまま感じるままに表してみた。もし本コラムを読んでクラシックに興味が出たという好奇心旺盛な人は、モーツァルト以外の曲でもよいので実際に聴いてみることをおすすめする。しかし、いきなりクラシックの演奏会に行くことは躊躇すると思うので、CDや動画サイトなどを活用して愛好家への第一歩を踏み出していただければ幸いである。