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会員コラム:多数派・少数派のおはなし  宮崎県小児科医会 幹事(どんぐりこども診療所院長)糸数 智美

この世の中は、多数決の世の中ですね。10人中9人が「こうだ」と言うことが「ふつう」で、違う事を言ったりしたりする1人は「変わってる(異常?非常識?)」と言われます。たとえば、目の前の真っ赤に熟れたリンゴを見て「わー、真っ赤にうれていて美味しそう!」という多数派に対し、「ゲーッ、毒リンゴみたいで気持ち悪い!」という少数派はおかしいのでしょうか?どう感じようが自由ですよね。もしかしたら、その子は様々な「赤」(スターキングの深い赤、サンフジや紅玉の明るい赤など)を見極める事ができる子かもしれません。感性の違い、脳のタイプの違いと言えるものです。でも、「我が子は多数派にいてほしい」「みんなと一緒だと安心」というのが親心。その結果、少数派の子どもを多数派に入れよう入れようとする力が働きます。
特に学校という多数派中心で動く世界は、少数派の子どもにとっては試練の場となりがちです。低学年のうちは、大人の「こうあるべき」という強い力に納得はしていないが動くことができていた子どもも、高学年になると「頑張っているのにできない」「親を喜ばせたい」「先生にほめられたい」と思っているのにうまくいかない自分に気づき始めます。その結果、「どうせボク(ワタシ)なんてダメな子だ」と突然不登校になった、攻撃的に反抗するようになったと相談に来られるケースは少なくありません。
大切なことは、「人と違う」という事を親が認めてあげること。みんなと違うという事は「劣っていることでも悪い事でもない」のですから。「(みんなできているのに)どうしてできないの!?」と子どもに迫るのではなく、「どうやったらできるかなぁ?」と言いかえてみてください。その時点で子どもサイドに立って物事が見えてくるようになります。子どもも一緒に考え助けてくれる大人にホッと安堵することでしょう。発達の凸凹を抱える子どもたちは、わかりづらい苦手さを指摘され続けることで自尊心を傷つけられます。車種や国旗は全部覚えられるのにオムツがとれない、器械体操は得意なのに靴ひもが結べない、絵を描く能力はすごいのに人前では全くしゃべれない等など、出来ることとできない事のギャップが大きいと生きづらいものです。
「自分の子どもはどんな子なのか」をよく観察して、毎日の関わりの中で「我が子のトリセツ」をつくりながら「その子らしさ」を大切に育てていけるといいですね。もちろん、診断がついていようがいまいが同じです。そして、トリセツ作りに行き詰ったら、1人で悩まずかかりつけ医や保健師、園や学校の先生に相談しましょう。みんなで育てて行けばいいのです。「育てたように子は育つ」を実感している少数派5人の孫持つバーバの想いでした。