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会員コラム:こどもの便秘 大江整形外科病院小児科 近藤 恭平

 こどもの便秘症とは週に2回以下の排便もしくは便秘によって痛み、おなかの張り、腹部不快感、不安また排便する際の痛みや出血を認めるときとされています。 頻度は小学生で10-20%、女子高生で30%とも言われています。5歳以上の便秘のこども達の約1/4は成人になっても便秘が持続する報告もあり、早期に適切な対応が求められています。便秘のメカニズムは、便が、大腸に長時間停滞すると水分が吸収され便は硬くなり太くなったりします。太く硬い便を排泄すると排便痛や肛門裂傷を生じます。このため、こども達は排便を嫌がるようになり、便の停滞時間がさらに長くなります。このことが水分の再吸収を助長し、更に硬い便が貯留し、悪循環が繰り返されます。常に大腸内に便が貯留すると、大腸は拡張し腸壁の進展刺激に対する感受性が鈍くなり便意が消失します。すると大腸内にはさらに多量の便が長時間停留することとなり、大腸の拡張が悪化します。大腸が拡張してしまうと治療が長期化することがあります。こどもの便秘治療は苦痛を伴わない排便が週に3回以上あり、排便に関する困った症状がなく、本人・家族がストレスのない生活を送れる状況が持続することです。治療のはじめは便が多量に貯留している状態か否かの確認です。便が多量にある場合はまずその除去をしっかりすることです。重症の場合は漏便を呈して治療効果ありと勘違いをしたり、または便が漏れて困るといったことが起こります。除去が十分でないと、本人や保護者は治療に効果がないと判断し、十分な治療を受ける機会を逃してしまいますので、医療者の腕の見せ所です。次に維持治療に移ります。 便秘が長期化している場合は薬物療法がほぼ必要になります。薬物療法の意義の説明、治療効果や便の硬さの確認が大切です。治療は便の再貯留と排便を我慢する行為の再燃を防ぐため、排便困難がなく規則的な排便習慣が得られた状態で、少なくとも数カ月は薬物治療を継続する必要があります。その後、投薬の減量または中止を検討しますが、治療薬の減量・中止が早すぎると再発しやすいため、徐々に減量することが大切です。幼児では、排便時の痛みに対する恐怖が解消しない限りトイレトレーニングは順調に進まないことが多いです。そのため、トイレトレーニングが完了するまで治療を継続することが大切です。薬物治療開始から6か月以内に規則正しい排便習慣が得られるお子さんは約50%と言われています。2年以内に薬物治療を完全に中止できるお子さんは約50%であり、約25%では思春期になっても薬物療法を必要とするとされています。また、一旦治療が成功しても5年以内に約半数のお子さんで1回は再発するため、必要に応じて医療者と相談しながら、治療を行っていくことが重要です。

便秘ひとつでも患者さんの悩みは深く、また医療者もしっかり診ないと治療がうまくいかないと感じている日々です。